ダイエット関連ビジネスの収益構造を、公式資料で整理する
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本ページは医薬品・医療の制度と市場を整理したもので、受診や服用を勧めるものではありません。
ダイエットに関わるビジネスは、同じ「体重を管理する」という目的を掲げていても、収益の生まれ方、価格の決まり方、適用される規制が大きく異なります。公的医療保険の枠内で行われる肥満症の薬物療法、公的保険の対象外である自由診療、食品として販売されるサプリメントや機能性表示食品、定期配送の宅配食、会費や回数券で成り立つパーソナルジムは、それぞれ別の仕組みで動いています。このページでは、それらを「何に対して対価が支払われるのか」「価格は誰が決めるのか」「どの規制が事業の設計に影響するのか」という観点で横に並べ、あわせて2026年10月時点で公式資料から確認できる業界の動きを整理します。
取り上げる動きは、GLP-1受容体作動薬の供給と適正使用をめぐる国の事務連絡、肥満症治療薬の保険適用の枠組み、経口GLP-1製剤の海外での承認、自由診療の価格構成、定期購入型ビジネスの収益指標、製薬会社の公表業績、米国の価格施策です。いずれも厚生労働省、PMDA、消費者庁、国民生活センター、製薬会社の公表資料で内容を確認できるものに限り、確認できなかった事項は「公式サイト参照」「IR資料参照」と記しています。将来の見通しにあたる部分は推測であることを明示し、可能性として書いています。
本ページは、特定の医薬品、医療機関、食品、サービスの利用を勧めるものではありません。医薬品の使用は、医師・薬剤師の判断に従う必要があります。市場全体の位置づけはダイエット市場の全体像で、個々の薬の承認効能は肥満症治療薬・ダイエット関連医薬品の比較で、広告や表示のルールは法規制と広告ルールで扱っています。本サイトが公式資料をどのように確認しているかは編集方針に記載しています。
【比較表】5つのビジネスモデルを、収益源・単価構造・規制で並べる
次の表は、ダイエット関連の主なビジネスモデルを5類型に分け、収益源、単価構造の種類、主な規制、本サイトで取り上げている主要プレイヤーの例を整理したものです。単価構造は金額ではなく「どのような種類の価格設定か」を示しています。具体的な金額や契約条件は、各社の公式サイトで確認する必要があります。
| ビジネスモデル類型 | 主な収益源 | 単価構造の種類 | 主な規制・根拠 | 主要プレイヤーの例(本サイトの掲載ページ) |
|---|---|---|---|---|
| 保険診療(肥満症外来) | 診療報酬(公的医療保険からの支払いと患者の窓口負担)。医薬品は薬価基準に収載された品目として製薬会社が供給 | 公定価格(薬価・診療報酬点数)に、自己負担割合を掛けた窓口負担 | 医師法・医療法・薬機法、薬価基準制度、最適使用推進ガイドライン(患者要件・施設要件)、保険適用上の留意事項通知 | 大学病院の肥満症外来(東京医科大学病院、東京大学医学部附属病院)、肥満症治療薬(ウゴービ、ゼップバウンド) |
| 自由診療(オンライン診療) | 診察料、薬剤費、配送料などを医療機関が設定して受け取る自己負担の対価 | 医療機関が定める価格。都度払い、複数回分をまとめた処方、定期的な継続処方など、支払いの単位が事業者ごとに異なる | 医師法、医療広告ガイドライン、オンライン診療の適切な実施に関する指針、薬機法。公的医療保険は適用されない | クリニックフォア、DMMオンラインクリニック |
| D2Cサプリメント(機能性表示食品・トクホ等) | 商品代金。初回購入と、2回目以降の継続購入(定期購入)の組み合わせ | 単品購入価格、定期購入価格、初回向けの価格設定など。継続回数の条件は事業者ごとに異なる | 食品表示法・食品表示基準、健康増進法、景品表示法、特定商取引法(通信販売・定期購入の最終確認画面) | ファンケル、花王など、届出情報またはトクホの許可で確認できた商品の販売者 |
| 宅配食サブスクリプション | 食事セットの定期配送代金。配送料や送料条件が別に設定される場合がある | 1食あたりまたはセット単位の価格、配送頻度に応じた契約。定期の継続条件や解約方法は事業者ごとに異なる | 食品衛生法、食品表示法、景品表示法、特定商取引法(通信販売) | nosh(ナッシュ)など |
| パーソナルジム | 入会金、月会費、コース料金、食事サポートなど付帯サービスの対価 | 期間コース制、回数制、月額制など。返金制度や中途解約の条件は契約ごとに異なる | 景品表示法、消費者契約法。サービス内容そのものについての国の事前審査はない | RIZAP、チキンジムなど |
2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。この表は収益構造の類型を整理したもので、金額、割引、解約条件は掲載していません。主要プレイヤーの例は、本サイトの各比較ページに掲載している事業者です。
表を読むうえでの要点は、価格を「誰が決めるか」にあります。保険診療では薬価と診療報酬点数が国の制度で定められ、医療機関や製薬会社が自由に価格を決めることはできません。自由診療、サプリメント、宅配食、ジムでは事業者が価格を設定しますが、その代わりに、広告表示、契約条件の表示、解約手続きの説明といった消費者保護のルールが収益設計に直接影響します。収益構造を理解することは、後の節で扱う定期購入トラブルや広告規制がなぜ繰り返し話題になるのかを理解することにもつながります。
GLP-1の供給逼迫と適正使用をめぐる国の事務連絡は、2023年に段階的に出された
国内のGLP-1受容体作動薬をめぐる環境を理解するには、2023年の公的文書を時系列で押さえることが近道です。厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は、2023年7月28日付の事務連絡「GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」で、2型糖尿病に適応を有するGLP-1受容体作動薬の一部の製剤で需要の増加に伴い出荷に制約が生じているとして、次の3点を関係者に周知するよう求めました。医療機関と薬局は返品が生じないよう買い込みを控え、当面の必要量に見合う量のみを購入すること。真に必要とする2型糖尿病の患者への供給が滞ることのないよう適正使用に努めること。医薬品卸売販売業者は、糖尿病治療を行っている医療機関と薬局へ優先的に供給すること、の3点です(厚生労働省 事務連絡 令和5年7月28日)。
同年11月9日付の事務連絡「在庫逼迫に伴う協力依頼(その2)」では、7月の依頼後も、一部の医療機関で2型糖尿病患者以外、主に美容・痩身目的の治療に使用されている実態があると承知していると記されました。そのうえで、卸売販売業者は医療機関や薬局から注文を受けた際に、薬事承認を得た範囲での治療を目的としたものかどうかを確認し、承認範囲外の治療目的であることが明らかな場合には納入をしないなど、糖尿病治療を行っている医療機関と薬局への供給を依頼しています(厚生労働省 事務連絡 令和5年11月9日)。供給の優先順位を流通段階で確認させるという内容であり、医薬品の販売ルートそのものに関わる要請でした。
2023年12月の「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」では、2型糖尿病治療薬として製造販売承認されているGLP-1受容体作動薬について、一部の医療機関で美容や痩身を目的に使用されている実態が指摘されていること、適応外で使用された場合の安全性及び有効性は確認されていないことが整理されました。あわせて、医薬品副作用被害救済制度の対象は適正な使用目的に従って適正に使用された場合に生じた健康被害に限られるため、適応外の美容・痩身・ダイエット等の目的で使用して重篤な健康被害が生じても、救済給付を受けられない可能性が非常に高いと注意喚起されています(厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報 No.406)。
学会も同じ時期に見解を出しています。日本肥満学会は2023年11月25日に、肥満症治療薬の適正使用に関するステートメントを策定し、2025年4月10日に改訂しました。この文書は、肥満症治療薬は健康障害を伴わない肥満に用いるべきではなく、低体重や普通体重など適応外の体重の人に美容・痩身・ダイエット等の目的で用いる薬剤ではないと明記しています(日本肥満学会 ステートメント)。日本糖尿病学会は2023年11月28日付の見解で、適応外の美容・痩身・ダイエット等を目的とした自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見されると指摘し、不適切な薬剤使用の推奨は学会として認められないと警告しています(日本糖尿病学会の見解(PMDA掲載))。製薬会社側でも、ノボ ノルディスク ファーマは自社サイトで、美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用を推奨していると受け取れる広告が掲載されている状況を示し、2020年から医療機関サイトを監視する「医療機関ネットパトロール」を実施して規制当局と関連学会に報告していると公表しています(ノボ ノルディスク ファーマ「GLP-1受容体作動薬の適正使用について」)。
ビジネスの観点から見ると、この一連の経緯が示すのは、供給量が限られている医薬品では「誰に優先して届けるか」が事業者の自由な判断だけでは決まらず、公的な要請と学会の見解が流通と処方の実務に影響するという点です。医薬品の供給は、需要だけでなく製造能力にも左右されます。注射薬では原薬の製造、製剤化、注入器(デバイス)への組み込み、充填といった複数の工程が必要で、こうした製造の構造は医薬品製造受託(CDMO)の業界解説が詳しく扱っています。日本イーライリリーは2026年8月の声明で、2022年以降に西神工場へ270億円を投資していると述べています(日本イーライリリー プレスリリース 2026年8月3日)。ノボ ノルディスクは、米国で発売した経口製剤について、ノースカロライナ州の自社施設で製造していると発表しています(ノボ ノルディスク米国 プレスリリース)。
なお、現在の各製剤の出荷状況は日々変わりうるため、本ページでは断定しません。2026年10月時点の供給状況は、各製薬会社の供給情報ページと、厚生労働省・PMDAの公表情報で確認してください。
肥満症治療薬の保険適用は、効能・効果と最適使用推進ガイドラインの2つで範囲が決まる
肥満症を効能・効果とするGLP-1系の薬が公的医療保険の対象になる範囲は、薬価基準への収載時の効能・効果と、厚生労働省が定める最適使用推進ガイドラインで決まります。日本肥満学会のステートメントによると、ウゴービ(セマグルチド)は2023年11月22日に、ゼップバウンド(チルゼパチド)は2025年3月19日に、肥満症に効能又は効果がある薬剤として薬価収載されました。効能・効果は、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合、またはBMIが35kg/m2以上の場合に限る、という条件付きです(厚生労働省 保医発1121第2号)。
最適使用推進ガイドラインは、患者の条件に加えて医療機関の条件を定めています。ゼップバウンドの肥満症のガイドラインを例にすると、施設については、代謝内科、糖尿病内科、内分泌内科、循環器内科又は内科のいずれかを標榜する保険医療機関であること、日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかの専門医を持つ常勤医師が所属していること、学会の教育研修施設として認定されていること、常勤の管理栄養士による栄養指導を行える体制があること、副作用に対応できる体制があることなどが求められています。患者については、食事療法・運動療法に係る治療計画に基づく治療を6か月以上実施しても十分な効果が得られないこと、その間に2か月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けていることなどが示されています(厚生労働省 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(肥満症))。保険診療で処方できる医療機関の範囲を、ガイドライン自体が絞り込む設計になっていることが分かります。
この設計は、収益構造にも影響します。保険診療では、薬剤の価格は薬価として公定され、処方できる施設と対象患者が要件で定まるため、製薬会社の販売先は要件を満たす医療機関に集まります。一方で、要件に該当しない人の減量目的の診療は保険の対象にならず、自由診療として別の枠組みで行われる領域が生じます。この領域で行われているGLP-1の適応外使用については、前節のとおり、厚生労働省、日本肥満学会、日本糖尿病学会が懸念や警告を表明しています。
2026年に入ってからの公式な動きも確認できます。2026年5月には、ゼップバウンドについて「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(ただしBMIが27kg/m2以上の場合に限る)」を対象とした最適使用推進ガイドラインが策定され(厚生労働省 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(閉塞性睡眠時無呼吸症候群))、肥満症のガイドラインも「令和7年3月(令和8年5月改訂)」の版が公表されています。ウゴービについては、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る)に対するガイドラインが2026年6月付で示されました(厚生労働省 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(MASH))。肥満症の薬が、肥満症以外の疾患にも適応を広げていく動きであり、保険診療の枠内で使われる薬の位置づけは、適応追加のたびに文書で更新されていることが分かります。
薬価の面では、2026年5月13日の中央社会保険医療協議会の資料で、2型糖尿病治療薬であるマンジャロ皮下注が「持続可能性特例価格調整」の要件に該当するとされ、2026年8月1日を適用日として薬価が見直されることになりました。同資料は、年間販売額が1,000億円超1,500億円以下かつ基準年間販売額の1.5倍以上に該当することを理由として挙げています(厚生労働省 中医協 総-4-3)。日本イーライリリーは、これに対する2026年8月3日付の声明で、2026年8月1日付で25%の薬価引き下げが実施されたこと、今回の決定に大きな懸念を抱いていること、低薬価が不適正使用の増加や海外からの医療ツーリズム、買い占めや海外への転売といったリスクを助長する可能性があると同社が考えていること、そのため2型糖尿病で使用している患者への安定的な供給ができなくなる可能性があるとしていることを表明しています。これは同社の見解であり、制度を所管する厚生労働省の判断ではない点に注意が必要です。
保険適用の範囲をめぐって今後ガイドラインや薬価がどう見直されるかは、現時点の公表資料からは判断できません。見直しの有無は、厚生労働省の中医協資料とPMDAの最適使用推進ガイドライン掲載ページで確認してください。オンライン診療の制度面は遠隔医療の業界レポートが詳しく扱っています。
経口GLP-1は海外で承認と発売が進み、国内の状況は公表資料での確認が必要である
経口のGLP-1製剤は、国内では2型糖尿病の治療薬として先行しています。ノボ ノルディスク ファーマの適正使用のページでは、リベルサス錠(セマグルチド)の効能又は効果は「2型糖尿病」と記載され、肥満症を効能・効果とする製品としては皮下注射のウゴービが掲載されています(2026年10月に確認した時点の内容)。
海外では動きが進んでいます。米国食品医薬品局(FDA)は2025年12月22日に、ノボ ノルディスクの1日1回投与の経口製剤「Wegovy pill」(セマグルチド)を、肥満症の成人などを対象に承認しました。同社の発表では、2026年1月5日に米国で発売され、最初の用量(1.5mg)は月額149米ドルで、割引の提供とあわせて案内されています(ノボ ノルディスク米国 プレスリリース)。2026年8月4日の同社の決算報告は、欧州医薬品庁(EMA)による承認が7月にあったこと、アラブ首長国連邦で6月に、英国で7月に発売されたことを記載しています(ノボ ノルディスク 2026年上半期の財務報告)。
イーライリリーの低分子の経口GLP-1受容体作動薬オルホルグリプロン(米国の製品名Foundayo)は、2026年4月1日にFDAが承認しました。FDAの発表は、申請から50日で承認されたこと、国家優先バウチャー制度での承認であることを記載しています(FDA プレスリリース)。この化合物は中外製薬が創製し、イーライリリーが全世界での開発権と販売権を保有しています(中外製薬 ニュースリリース 2026年4月2日)。イーライリリーの2025年第4四半期の決算発表は、オルホルグリプロンの肥満症に対する承認申請を米国と日本の規制当局に行ったことを記載しています(イーライリリー 2025年第4四半期の決算発表)。日本での審査の進捗や承認の有無は、PMDAと日本イーライリリーの公表資料を参照してください。
経口製剤の登場が収益構造にもたらす変化について、現時点で公式資料から断定できることは多くありません。以下は推測であり、可能性として挙げるものです。第一に、経口剤は注射剤と投与の手間や保管の条件が異なるため、薬局や遠隔診療を通じた提供の形が変わる可能性があります。実際に米国では、ノボ ノルディスクがWegovy pillを薬局のほか複数の遠隔診療事業者を通じて提供していると報告しています。第二に、国内で承認された場合でも、保険適用の範囲は最適使用推進ガイドラインの要件で決まるため、自由診療で行われている減量目的の処方と同じ扱いにはなりません。第三に、自費で価格を公表して提供する米国型の提供経路が、国内の規制環境(医療広告ガイドライン、オンライン診療の指針)の下でそのまま成立するとは限りません。本サイトは経口GLP-1の美容・痩身目的での使用を勧めるものではありません。経口GLP-1の国内外の動向は、肥満症治療薬・ダイエット関連医薬品の比較の薬ごとの整理もあわせてご覧ください。
自由診療の価格は、薬剤費・診察料・配送料などの構成要素に分けて読む
自由診療は公的医療保険の対象外であり、費用の全額が自己負担になります。診療報酬のような公定価格がないため、価格は医療機関が定めます。そのため、同じ種類の薬でも、請求の単位や構成が医療機関ごとに異なります。価格の構成要素は、おおむね次のように分けて読むことができます。
- 薬剤費:処方される薬そのものの費用。1回分、1か月分、複数か月分など、処方量の単位が医療機関ごとに異なる
- 診察料:初診料、再診料、オンライン診療のシステム利用料など。診察のたびに発生するか、薬剤費に含まれるかは医療機関ごとに異なる
- 配送料:薬を自宅へ届ける費用。送料が薬剤費に含まれる場合と別建ての場合がある
- その他の費用:検査費、手数料、決済手数料、定期処方の管理にかかる費用など
総額は、薬剤費に処方期間を掛け、診察料と配送料を足したものが基本になります。そのため、広告で目立つ「1回あたり」や「1か月あたり」の表示だけで比較すると、処方期間や支払い回数が違うサービス同士を同じ尺度で並べられません。契約前には、総額、支払い回数、継続条件、解約や返品の可否を、公式サイトの料金表と利用規約で確認することが大切です。
国民生活センターは、2023年12月20日の公表で、痩身目的等のオンライン診療について、初診時に数か月分の処方薬が処方される、副作用の説明や基礎疾患の問診が十分でない、処方薬の定期購入の中途解約に条件があっても説明が不十分、といったケースが見られると整理しました。年度別の相談件数は、2021年度が49件、2022年度が205件、2023年度は10月31日までで169件と公表されています(国民生活センター 痩身目的等のオンライン診療トラブル)。2026年6月23日にも、ニキビ、AGA治療や痩身目的等のオンライン診療について、処方薬の定期購入にかかるトラブルが目立つとして注意喚起が出されています(国民生活センター 2026年6月23日公表)。収益構造の面から見ると、継続処方や複数回分の処方は事業者にとって安定した売上につながる一方、消費者にとっては契約内容の理解が難しくなりやすい構造だと言えます。
オンライン診療のルールは、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂)に定められています。この指針は、初診からオンライン診療を行う場合の考え方を示すとともに、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬などを患者が希望する場合に、対面診療で必要性を確認せずオンライン診療のみで処方を行う例を、不適切な例として挙げています(厚生労働省 オンライン診療の適切な実施に関する指針)。GLP-1受容体作動薬の美容・痩身目的での使用は、自由診療で行われている現状がありますが、厚生労働省、日本肥満学会、日本糖尿病学会は前述のとおり懸念や警告を表明しており、本サイトはこれを勧めるものではありません。個々のクリニックの診療形態や料金体系の種類は、肥満症外来・医療痩身・オンライン診療クリニックの比較で事実項目として整理しています。
D2Cサプリメントの定期モデルは、獲得コストと継続期間で収益が決まる
D2C(Direct to Consumer)とは、メーカーが小売店を通さず自社の通販サイトなどで消費者に直接販売する形態です。ダイエット関連のサプリメント、機能性表示食品、宅配食、パーソナルジムの多くは、この形態や、継続課金を前提にした売り方を採っています。一般的なビジネス概念として、次の指標が使われます。
- 顧客獲得コスト(CAC):新しい顧客1人を獲得するためにかけた広告費や販売促進費の合計を、獲得できた顧客数で割ったもの
- 顧客生涯価値(LTV):1人の顧客が取引を続ける間に事業者にもたらす利益の合計。平均購入単価、購入頻度、継続期間、粗利率を掛け合わせて推計するのが一般的な考え方
- 解約率(チャーンレート):一定期間に解約した顧客の割合。継続期間の長さを左右する
- 回収期間:獲得コストを、顧客がもたらす粗利で取り戻すのにかかる期間
定期モデルでは、LTVが獲得コストを上回る状態を作れるかどうかが収益性の基本になります。初回の購入価格を抑えて新規顧客の獲得を促し、継続購入で利益を回収する設計は、広告費がかさみやすい分野で採られやすい考え方です。一方で、この設計は「初回の条件」と「継続時の条件」が異なるため、消費者に誤解を与えやすいという側面を持ちます。
この点について、消費者庁は特定商取引法の改正により、2022年6月1日以降、通信販売の事業者は取引における基本的な事項を最終確認画面で明確に表示することが必要になり、誤認させる表示により申込みをした消費者は契約を取り消せる可能性があると案内しています(消費者庁 インターネット通販の定期購入トラブルには御注意を)。定期購入を前提にした事業では、この表示義務を守ることが収益モデルの前提条件になります。
機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づき特定の保健の目的が期待できる旨を表示できる制度で、事業者が消費者庁長官に届け出た内容は消費者庁のウェブサイトで誰でも確認できます。消費者庁は、公表されている届出内容を超えた広告を鵜呑みにしないよう消費者に呼びかけています(消費者庁 機能性表示食品について)。つまり、サプリメント事業者は、届出表示の範囲内でしか機能を訴求できない中で、獲得コストと継続率を設計していることになります。届出番号と届出表示の読み方はダイエット関連の機能性表示食品・サプリメント・トクホの比較で、広告表示のルールは法規制と広告ルールで扱っています。
宅配食とパーソナルジムも、継続課金という点では共通しています。宅配食は配送頻度と定期の継続条件、ジムはコース期間と中途解約・返金の条件が、LTVの前提となる継続期間を左右します。具体的な契約条件は事業者ごとに異なるため、食事・運動サービスの比較の事実項目と、各社の公式サイトで確認する必要があります。
医療機関と食事・運動サービスの連携は、公式に案内されている範囲で整理する
肥満症の薬物療法は、食事療法・運動療法を前提としています。前述のゼップバウンドの最適使用推進ガイドラインは、施設に常勤の管理栄養士による栄養指導の体制を求め、患者には2か月に1回以上の管理栄養士による栄養指導を求めています。保険診療では、栄養指導を医療機関自身が担う設計になっており、外部の宅配食やジムとの連携は要件に含まれていません。
一方、自由診療やオンライン診療の事業者の中には、食事や運動の支援を外部の事業者と連携して提供する取り組みを公表しているものがあります。公式に案内されている例として、オンライン診療サービス「おうち病院」を運営する株式会社アナムネは、2026年2月5日に、「きちんと向き合う肥満症改善外来」で、カロリーと塩分量を調整した医師監修のミールキット「ヘルスケアOisix」と連携し、「第1期 ヘルスケアOisix食生活改善プログラム」の参加者募集を開始すると発表しました。同じ発表の中で、2025年12月12日に運動習慣の改善を目的としてバーチャルゴルフスタジオとの連携を開始したことも案内しています(株式会社アナムネ プレスリリース(PR TIMES))。このように、診療と食事・運動を組み合わせる動きは、連携先との協業というかたちで一部の事業者が打ち出しています。
この種の連携で、事業者間の費用の分担や紹介の対価がどのように設計されているかは、公式資料では確認できません。そのため本ページでは扱いません。消費者の側から確認できる事項としては、診療を行う医療機関の名称と運営法人、食事や運動の提供主体、それぞれの契約条件と解約方法、費用の内訳の4点があります。診療と食事・運動のサービスが別の契約になっている場合、それぞれの解約条件を個別に確認する必要があります。
製薬会社の公表業績は、決算期と通貨を確認して読む
肥満症・糖尿病領域の製薬会社の業績は、この市場の規模感を測る手がかりになります。以下は各社の公表資料から確認できた数値で、通貨と決算期が異なるため、単純な比較はできません。為替の換算は行っていません。
- イーライリリー・アンド・カンパニー(決算期は暦年、通貨は米ドル):2025年通期(1月〜12月)の売上高は651億7,900万ドルで、前年の450億4,300万ドルから45%の増加と公表されています(2025年第4四半期の決算発表)。2026年第2四半期(4月〜6月)の売上高は230億ドルで前年同期比48%の増加、数量の増加が60%、実現価格の低下が13%と説明されており、2026年通期の売上高見通しは850億ドルから870億ドルの範囲に引き上げられました(2026年第2四半期の決算発表)。
- ノボ ノルディスク(決算期は暦年、通貨はデンマーク・クローネ、成長率は為替変動の影響を除いた定率ベース):2026年上半期(1月〜6月)の報告ベースの売上高は1,753億1,100万クローネで、定率ベースで18%の増加でした。ただし、報告ベースの数値には米国の340Bプログラムに関連する販売リベート引当金の戻し入れ(一回限りの影響)が含まれており、同社はその影響を除いた調整後の売上高を1,485億5,100万クローネ(定率ベースで2%の増加)と公表しています。2026年通期の調整後売上高成長率の見通しは、定率ベースで0%から6%の減少と、前回見通しから改善された範囲です(2026年上半期の財務報告)。
- 大正製薬(決算期は3月):大正製薬ホールディングスは2024年4月9日に上場廃止となり、財務ライブラリーには上場廃止までに公開していた情報が掲載されています(大正製薬 財務ライブラリー)。決算公告(計算書類)は電子公告のページで公開されています(大正製薬 電子公告)。最新期の数値は、これらの公表資料を参照してください。
数値の読み方には注意点があります。イーライリリーの2026年第2四半期の売上高の増加は、数量の増加が価格の低下を上回った結果であり、同社の説明では、米国の実現価格の低下は主にゼップバウンドとマンジャロが要因とされています。ノボ ノルディスクの場合は、報告ベースの売上高と調整後の売上高に大きな差があるため、どちらの数値を指しているのかを確認する必要があります。日本国内の事業の業績は、日本法人の決算公告や、各社の地域別売上の開示で確認することになりますが、本ページでは数値を転記していません。詳しくは各社のIR資料を参照してください。
米国の価格施策は、国内の公定価格と自由診療の構造とは別の枠組みで動いている
2025年11月6日、ノボ ノルディスクは米国政府と合意したことを発表しました。内容は、2026年から、セミグルチド製剤(WegovyやOzempic)の価格を米国のメディケア・パートD、メディケイド、患者への直接販売(自費)のチャネルで引き下げ、肥満症治療薬のメディケア・パートDでの保険適用をパイロットプログラムで可能にするというものです(ノボ ノルディスク 2025年11月6日の発表)。イーライリリーも同日、米国政府との合意を公表しています。ホワイトハウスのファクトシートは、政府の販売窓口TrumpRxを通じて購入する場合の価格、メディケアの患者負担などを記載しています(ホワイトハウス ファクトシート 2025年11月)。ノボ ノルディスクの2026年上半期の報告では、メディケア・パートDの肥満症治療薬の保険適用が、ブリッジ・パイロットプログラムとして2026年7月1日から実施されていると記載されています。
企業の決算にも、価格施策の影響は表れています。前節のとおり、イーライリリーは2026年第2四半期に数量の増加が価格の低下を上回りました。ノボ ノルディスクも、2026年第2四半期の調整後売上高の増加(定率ベースで7%)について、GLP-1の数量増加が実現価格の低下で一部相殺されたと説明しています。米国市場では、価格が下がる一方で、利用者の数が増え、経口剤という新しい剤形が加わるという、複数の変化が同時に進んでいます。
国内への示唆を考える際には、制度の違いを踏まえる必要があります。日本では、保険診療で使う薬の価格は薬価として国が定め、薬価の見直しも中央社会保険医療協議会の議論を経て行われます。米国のように、製薬会社が自費向けの価格を公表して直接販売するチャネルは、国内では医療広告ガイドラインや、処方には医師の診察が必要という前提の下で、同じかたちで成立するとは限りません。したがって、米国の価格施策が直ちに国内の価格に反映されると考えることはできません。可能性として考えられるのは、次の2点です。第一に、米国での価格競争や経口剤の普及が、国内の製薬会社の事業戦略や国際的な価格比較の議論に影響を与える可能性があります。日本イーライリリーは前述の声明の中で、国内のマンジャロの薬価の水準について、G7諸国や同規模の経済圏との比較を挙げて懸念を示しています。第二に、国内の自由診療で扱われる薬の供給や価格が、海外の需給や制度の変化の影響を受ける可能性があります。ただし、これらは推測であり、公式資料から因果関係を確認できるものではありません。
消費者の立場では、海外の価格や制度の報道を、そのまま国内の費用の目安と考えないことが大切です。国内で医薬品を使う場合は、承認された効能・効果と、公的医療保険の対象かどうかを医師に確認してください。
一次情報の確認先
本ページで参照した公的機関・製薬会社の資料の一覧です。最新の内容は、各リンク先の公開ページで確認してください。
- 厚生労働省 事務連絡「GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」(令和5年7月28日):供給逼迫時の買い込み抑制と優先供給の依頼
- 厚生労働省 事務連絡「在庫逼迫に伴う協力依頼(その2)」(令和5年11月9日):卸売販売業者への納入確認の依頼
- 厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報 No.406(2023年12月):適応外使用に関する注意喚起
- 厚生労働省 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(肥満症):患者要件と施設要件
- 厚生労働省 中医協 総-4-3(令和8年5月13日):持続可能性特例価格調整の対象品目
- 厚生労働省 オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和8年4月改訂)
- 国民生活センター 2026年6月23日公表:オンライン診療のトラブル
- 消費者庁 定期購入トラブルと最終確認画面
- ノボ ノルディスク ファーマ GLP-1受容体作動薬の適正使用について
- 日本イーライリリー プレスリリース(2026年8月3日)
- ノボ ノルディスク 2026年上半期の財務報告
- イーライリリー 2026年第2四半期の決算発表
- 大正製薬 財務ライブラリー
まとめ:次に読むページ
ダイエット関連ビジネスの収益構造は、保険診療、自由診療、D2Cサプリメント、宅配食、パーソナルジムで大きく異なり、価格を誰が決めるかという点と、継続課金の設計が共通の論点になっています。国内では、2023年の供給逼迫と適正使用の事務連絡以降、肥満症の薬物療法は最適使用推進ガイドラインの要件の下で行われ、適応の追加や薬価の見直しが2026年にも続いています。経口GLP-1は海外で承認と発売が進んでいますが、国内の状況は公表資料での確認が必要です。
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